kumakuma-blog

気まぐれ日記 

今日の気まぐれ日記は、某、笑っていいともでもやっている「ちょっといい話し」をします。

あれは小学校の時の話です。
僕は元々、生まれた場所で育ったので、ずっと同じ学校に通っていました。
ある日、転校生がやってきたのです。
転校生ってどうしても、向こうもこっちも、はじめはなじめないものですよね。

僕は特に意識もせず、向こうも別の友達と仲良くしていました。

1年が過ぎて、クラス変えになって、彼とは別のクラスになりました。

特に仲良かった訳ではないので、それは僕にとって大した出来事ではありませんでした。

そして、秋の運動会の時。

竹取物語という競技があって、本物の竹がグランドの真ん中に何本か置いてあって、それを100メートルくらい離れた両方から、クラス対抗で奪いに行くという競技。

「よーい」、バン!」甲高いピストルの音が澄んだ秋の空に響いて、僕は夢中でかけだした。

両者30人くらいずつのクラスが竹に向かってもうダッシュしてくる。

そして、向こうのクラスからすごい目つきで走ってくる人を見つけた。
そう、転校生の彼だ。

僕はやっと竹に手が届き、それをひっぱった、その時、彼はその竹を奪いにくるかと思いきや、いきなり僕の体に蹴りを入れたのだった。
「痛っ!!」
うずくまる僕を横目に彼は、竹を持って自分のチームの方へと帰って行った。

そんな事があってからずっと、彼とは口をきかなかった。

やがて時は流れて、中学になった。
もちろん彼も同じ中学に入った。

そして、2年の時に同じクラスになった。
色々と会話をするようになってきて、僕の記憶からも、竹取物語の出来事は薄れて行った。

そして、僕はバンドをはじめて、彼はコンピュータに夢中だった。
「さくまがCD作る時はパソコンでデザインとかやってやるよ」
そんな話で盛り上がる日もあった。

高校はみんなバラバラになるのだが、僕の行った高校へ、男子の同級生は4人。
しかも、その中に彼はいた。

同じ駅から電車に乗って行くので、しょっちゅう合っていた。
恋に落ちる思春期も、お互い、「あの娘がさぁ」「何組の誰々が・・」と話をしていた。

そして、僕は相変わらずバンドを組んで活動していた。
彼は彼で先端を行く、コンピュータにものすごく詳しくなっていた。

CDを出す!という時に、彼は「カラーコピーが安いよ」とか、「写真にプラ板をのせて字を書けば、結構いいよ」とか、ジャケットを作る事に協力してくれた。

その頃はもちろん、パソコンが買える訳もなく、ウィンドウズという簡単に使えるようなパソコンは存在しなかった。
だから、手作りで、写真を大きく焼いて、そこに字を書いて、コピーして、それを切って、そんなもの凄い手間のかかる作業を一緒にやってくれた。

そして、結果的に、「Gypsy」という当時、僕がやっていたバンドの手作りCDが完成した。
その時は30枚だけ作った。それでも「30枚も売れるかな?」と本気で悩んだ時期だった。
ジャケットのタイトル「YoucanALL」という文字は、彼が手書きで書いてくれたものだった。
その後も、CDを作る時に、協力してくれて、そしてライブにも来てくれた。

僕は高校を中退して、本格的に歌の道へと進んだ。
そして、彼は高校を卒業してから、専門学校へと進んだ。

そして、時は流れ、彼は結婚式をする事になった。

その時、僕は彼の為に歌を作って、披露宴で歌った。
静まりかえる会場に、バラードがしみこんで行った。
歌いながら、ふと彼の方を見ると、うつむいて、目を真っ赤に染めていた。
最後のフレーズを歌い終えた時、彼の瞳からこぼれる涙を僕ははじめて見た。

2次会も終わり、落ち着いた頃、彼は僕の方に来て、こう言った。

「さくま、今日はありがとう、すっごくいい歌だったよ」
そんな事言うような仲ではないので、僕も照れくさかった。
そして、その後、彼は続けてこう言った。
「あと・・・あの時は、ごめん」

「えっ!?あの時ってなに?」
僕が照れ笑いして聞き返すと、彼は一度だけ頷いて
「あの時だよ、小学校の時の、竹取物語だよ」

彼は覚えていたのだ。
僕の方はすっかり忘れていて、仲良しになっていたつもりだったが、彼は覚えていたのだ。

「ずっと言えなかったけど、すまん」
「なにを、今さら、いいんだよ!」と僕も言った。

「あの時、クラスのみんなで、相手のチームのやつに蹴りを入れようって悪い発想がわき上がって、そして、誰がだれを攻撃するかを決めたんだけど。その時の条件で、自分が強敵だと思うやつにしよう、ってなって、強敵というか、偉大になるオーラを持っていた、さくまを俺は真っ先に狙っちゃったんだ、本当にごめん」

「いいよ、いいよ」
僕も首を横に振りながら言った。

そして、彼はこう告げた。
「でも、当たってたな!偉大な人間になって行くっていう俺の予想!」
さっきまでとはうって変わっての、明るい態度に、僕も
「当たってたかな!!?まだ全然偉大じゃないぞ!」
と、つっこんだ。

そんな姿を見て、彼の奥さんも、あきれたように笑っていた。


・・・・・・。

彼には今、子供が2人いて、幸せな家庭を築いています。
そして、僕は相変わらず音楽の道、そして彼はコンピュータの道へ進んで、仕事をしています。

・・・今でも、音楽活動の協力はしてくれてるかって??

もちろん!!
今、貴方が読んでいる、このホームページ、この管理人を10年以上やってくれているのが、その彼ですから!!

たまに二人で、あの日作ったCDを見たりします。
「もう、17年経つんだー」

「今だったらパソコンを使って、もっといいジャケット作れるのに」
そう言う彼。
「僕だって、今だったら、もっといい歌が作れるよ!」
そう言う僕。

思えば、小学校の時から、同じ道を変わらずに歩いている二人が、そこにいた。

変わった事と言えば、プラ版に手書きで、作っていた彼が、今は、ハイテクのパソコンで何でもこなせる事。
そして、30枚作って「売れるかな?」と心配していた僕が、今は、お客様のお陰で、それよりは、ほんのちょっとだけど多くCDが出せるようになった事。

でも、二人の心の中にある、なにかに熱中する気持ちは、きっと少年のままなのだと思います。

ケンカのように始まった二人の仲でしたが、今は一生をかけて大切な友達です。

こんな日記を書いている所に、彼から電話です!

「今日はどこまわってるの? クマクマパラダイスのCD、早く送ってよ!」
だって(笑)
そんな、きついいい方されると、こんなに美化するんじゃなかったって思っちゃいますよね(笑)

でも、決して美化してるのではなく、これがいつもは言葉に出せない、本音です。

ふと棚から昔のCDをひっぱり出してみる。
汚い文字でかかれたジャケット、そして、下手な演奏と、音程の取れていない歌声が流れる。
目を閉じると、あの日。
一生懸命だった二人は確かに笑顔だった。

そして、なによりも嬉しいのは、
その笑顔は、今もまだ、色あせる事なく、
あの日と変わらない情熱で、ここにあるという事です。

振り返れば、あの日の二人が、いつもこの胸の中にいるから・・・。











"
< 前の記事    一覧へ    後の記事 >